植物グルタミン合成酵素の構造と機能の研究

1.植物のグルタミン合成酵素GS1aの結晶解析

 植物は独立栄養を営んでおり、土壌や大気から獲得した無機態(無機物質)の栄養を有機化合物にしている。植物の三大栄養素は、窒素、カリウム、リンであり、窒素源は植物の成長を制限する重要な栄養素で、学術的にも農業生産にとっても大きな関心がある。高等植物では、窒素は硝酸イオンとアンモニアの形で根から吸収される。硝酸イオンは根や葉においてアンモニアに還元される。引き続くアンモニア同化反応において、アンモニアはグルタミン酸と反応しグルタミン酸側鎖のカルボキシル基のアミド化に使われ、グルタミンとして炭素骨格に組み入れられる。この反応はグルタミン合成酵素により触媒され、ATPがADPに加水分解されるエネルギーを利用する。グルタミンは植物体の組織に移動し、窒素源として各種アミノ酸、核酸塩基などの窒素供給源となる。グルタミン合成酵素は次の反応を触媒し、窒素原子が有機化合物の炭素骨格に組み込まれる最初の反応であり、窒素同化のキー酵素とよばれている。

アンモニア+グルタミン酸+ATP → グルタミン+ADP+Pi

 トウモロコシのグルタミン合成酵素はクローニング(文献1)され,生化学的,生理学的性質が調べられた(文献2)。植物のグルタミン合成酵素はホモ10量体で、2006年に我々は、真核生物のグルタミン合成酵素として世界で初めてGS1a の結晶解析に成功した(文献3) 。微生物などの原核生物のグルタミン合成酵素は12量体で、構造が似ているが違っているところも多い。

2.植物グルタミン合成酵素のイソ酵素 GS1aとGSd

 植物のグルタミン合成酵素には,GS1とGSrが存在する。GS1は,植物体のほとんどあらゆる場所に存在し,常時存在している。GSrは根などに存在し,土壌中に硝酸塩,アンモニアが存在すると酵素蛋白質が生合成される。GS1は安定でGSrにくらべて活性が低い。GSrは活性が高く不安定であり,生理学に合理的である。

酵素蛋白質GS1は10量体で,GS1aとGS1bが混ざって出来上がっている。酵素蛋白質GSrも10量体で,GS1cとGS1dが混ざってできあがっている。GS1aとGS1dの単量体は混合して10量体をつくらない。つまり,GS1a, GS1bとGS1c, GS1dの2群の蛋白質単量体(サブユニット)は,互いに認識し,別物の蛋白質として区別している。この蛋白質のサブユニットの認識のメカニズムを解明することを目的に,GS1dの結晶解析を行っている。

GS1dは10量体になり,GSrをつくる。GS1dの結晶解析から,GS1aとの構造比較から,GSrの不安定性,高活性の構造的要因を結晶解析により明らかにすることを目的としている。

文献

1.Sakakibara H, Kawabata S, Takahashi H, Hase T, and Sugiyama T. Plant Cell Physiol., 33, 49-58 (1992)
2.Sakakibara H, Shimizu H, Hase T, Yamazaki Y, Takao T, Shimonishi Y, and Sugiyama T., J. Biol. Chem. 271, 29561-29568(1996)
3.Unno H, Uchida T, Sugawara H, Kurisu G, Sugiyama T, Yamaya T, Sakakibara H, Hase ,T, and Kusunoki M. , J. Biol. Chem. 281, 19287-29296 (2006)

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