卒業生からのメッセージ

井上 潤一
大学院医学工学総合教育部 人間環境医工学専攻 博士課程卒業生
現シナプテック(株)最高技術責任
(独)理化学研究所 環境分子分解科学研究チーム

日本農芸化学会関東支部大会(2008.10.11)において、若手奨励賞を受賞。
研究題目:「オオシロアリ腸内原生生物の水素生成関連遺伝子群の多様性解析」(井上潤一 他)

日本農芸化学会若手奨励賞を受賞して
この度は日本農芸化学会若手奨励賞を賜り、大変名誉なことと思います。これまでの研究についてご指導、ご支援して下さった先生方に厚くお礼を申し上げたいと思います。
本研究はシロアリの「水素放出」という地球表層の動物としては珍しい性質に注目した点が特徴です。シロアリを密閉した容器で飼育すると、容易に検出できる程の水素が容器内に溜まります。まだ酸化する余地のある水素を捨てるのはエネルギー生産という観点からはもったいないことです。なぜ水素を捨てるのか、そんな疑問を解決するため本研究を進めてきました。
シロアリは腸内におびただしい数の微生物が共生しています。その中には単細胞真核生物である原生生物が知られています。一部の原生生物はヒドロゲノソームという水素を生産する細胞内小器官を有し、その活動によって生成した水素の一部がシロアリ体外に放出されると考えられています。本研究では、その水素生成を直接担っている主役とも言うべき酵素、ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をシロアリ腸内の原生生物から取得して解析しました。その結果、36種類もの新しいヒドロゲナーゼ遺伝子が見つかりました。
燃やしても水しか生成しない究極のエネルギー物質としても注目されている水素ですが、未だに有効な生物学的水素生産方法は確立されていません。本研究の結果からシロアリ腸内はヒドロゲナーゼ遺伝子資源の宝庫であることが明らかとなり、この中から将来水素生産に使えるような強力な水素生成酵素が見つかるかもしれません。
まだ水素放出の謎は完全に解けていませんが、本研究におきましては栄えある賞を頂き大いに奨め励まされた気持ちで今後も研究の進展に努めていきたいと思います。
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