卒業生からのメッセージ

小阪田 嘉昭
メルシャン株式会社技術顧問
発酵生産学科 昭和43年卒業

『ワイン造りの伝統は技術者の継承』
メルシャン株式会社はワインを核とする総合酒類製造を主体とする会社であり、山梨大学からは発酵1回生の渡辺昌保、2回生の有泉一征、丸山敏彦の諸先輩をはじめ、多くの発酵系の卒業生が入社しています。私は1968年(昭和43年)に発酵生産学科を卒業し、同年に三楽オーシャン株式会社(現メルシャン株式会社)に入社しました。藤沢工場製造課に配属され、ワインの品質管理に従事、その後、勝沼ワイナリーに転勤になってからワイン醸造の現場で国産ワインの改良をしてきました。最初に取り組んだのは、国内にある既存品種「甲州」「マスカット・ベリーA」の醸造方法による改良でした。醸造専用品種からのワイン造りを強く熱望するようになり、フランスのワイン造りを体験するために1977~78年フランス政府給費技術留学生としてブルゴーニュ・ワイン醸造試験所とディジョン大学ワイン醸造学科へ留学しました。約2年間の滞在中、ブルゴーニュ・ワインの詳細な醸造方法と原産地統制呼称法を習得しました。帰国後は勝沼ワイナリーで醸造専用品種の醸造にも取り組み、特に城の平試験農場でのカベルネ・ソービニヨンの垣根栽培には、留学時代の情報が役立っています。1985年にはパリに欧州事務所の開設を命じられ、初代の事務所長として再びフランスに滞在することになりました。90年までの任期の間にボルドーのシャトー・レイソンの買収を体験し、技術者の目を通して選択した提携先とも良好な関係が現在も続いていることは、当事者として嬉しく思っています。欧州事務所から帰国後、勝沼ワイナリー工場長、本社ワイン事業部長、執行理事ワイン技術部長等を歴任し、現在、技術顧問として、約40年間ワイン事業に従事してきています。また、日本ワイナリー協会参与、日本洋酒輸入協会ワイン委員長として業界の仕事にも携わり、1995年に田崎真也氏が優勝した世界最優秀ソムリエ・コンクールの審査員もしました。

弊社は三楽オーシャン、三楽、メルシャンと何度かの社名変更をしていますが、ワイン事業は1877年(明治10年)に勝沼に設立された日本最古のワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」を継承して、現在、日本のワイン・トップメーカーとして国産ワインの品質向上に取り組んできています。昨年12月にキリンビール社と酒類事業における業務資本提携を締結しましたが、ワイン事業は弊社に統合して名実ともワインのリーディング・カンパニーを目指していきます。

現在メルシャン株式会社には山梨大学出身者が発酵生産学科を中心に私を含めて14名がおり、各部門で活躍しております。ワイン事業では、メルシャン勝沼ワイナリー次長の味村興成(発酵56、修士58)は、チーフ・ワインメーカーとしてメルシャンワインの統括醸造責任者として活躍しています。長年、ニュートラルな品種と考えられていた甲州ブドウから醸造したワインに新しい柑橘系の香りがボルドー大学との共同研究によって発見され、「シャトーメルシャン甲州きいろ香」として新発売されたことが大きな話題となりました。これまでの甲州ワインの改良は醸造技術によって行なってきましたが、「甲州きいろ香」の商品化はワイン造りの基本であるブドウそのものに科学的知見を取り入れたものであり、今後の日本のワイン造りに大きな指針を与えたものと考えています。ボルドー大学と共同研究には商品開発研究所の小林弘憲(化学生物工学H9、修士H11)が中心となって活躍しています。また、大滝敦史(発酵H2、修士H4)は欧州事務所で、鷹野永一(発酵H2)はボルドーの弊社所有シャトー・レイソンで技術駐在員として海外でも活躍しています。

メルシャン株式会社のワイン造りの伝統は明治以来の経験と知見を基に、常に革新を考えて醸造に挑戦する技術者の継承であります。最近、日本産ワインの品質が向上してきていますが、山梨大学の卒業生の貢献が大きいものとなっています。
(2007.5 山梨工業会誌寄稿)

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