教員・研究室紹介

蛋白質構造生物学研究室

蛋白質構造生物学研究室

 本研究室ではX線結晶構造解析法を中心とし、『タンパク質の形から機能を明らかにする』ことを目標とした構造生物学という分野の研究を行っています。

 生物の細胞にはタンパク質や核酸などの生体高分子物質が数多く存在しています。それらが協調的に働いて生命を維持する仕組みは非常に巧妙で、神秘的でさえあります。しかし、複雑な生命現象も個々の物質や反応に焦点を当てれば十分理解可能であり、それらの現象を正確に把握し、知識を積み重ねていくことにより、生命の神秘に迫ることを目指しています。タンパク質は生体内に何万種類も存在し、それぞれが固有の機能を担っています。タンパク質が機能を発揮するためには、その形=立体構造が重要であり、X線結晶構造解析、超高分解能電子顕微鏡やNMRといった手法を用い、タンパク質の構造を原子レベルで決定し、生理機能を明らかにするのが構造生物学という分野です。私たちはX線結晶構造解析によりタンパク質の立体構造を決定し、その機能を研究しています。現在は、DNA複製と修復、核内受容体、植物二次代謝産物生合成などを主なテーマとして研究を行っています。

 結晶構造解析の流れ:目的タンパク質を高純度に精製し、結晶化します。良い結晶が得られたら、X線を照射して回折データを収集します。その後、コンピューターで解析すると、タンパク質を何百万倍にも拡大した、原子レベルの構造を得ることが出来ます。そして、得られた構造をもとに、その機能を検証します。

  

 

 

 

 

 

 

結晶構造解析の流れ

 試料タンパク質の作製:遺伝子組換え技術を用い、主に大腸菌にタンパク質を作ってもらいます(組み換え体)。数リットル規模で培養し、菌体からタンパク質を抽出後、何種類かのカラムと専用装置を

使って精製します。試料の純度検定では、動的光散乱(DLS)という特殊な分析法を使うことも有ります。1回の実験で得られるタンパク質は数mg、耳かき1杯にも満たない量ですが、結晶化は微量(μℓスケール)で行うので、それだけあれば十分です。

 

 

 

 

 

 

大腸菌の大量培養装置

 

 

 

 

 

 

蛋白質精製(クロマトグラフィー)装置

 

 

 

 

 

 

分子量精密測定(動的光散乱)装置

 結晶化:タンパク質の結晶化は原理的には無機物の結晶化と同じ戦略です。少しずつ質溶液を濃縮していくと、長さ50~200μm程度の結晶を得られます。肉眼では見えないので光学顕微鏡を使って観察します。なお、結晶化条件はタンパク質により異なるので、結晶化は宝探しです。最低でも数百条件検討する必要がありますが、ロボットを使うことでより効率的な条件検索を行うことができます。待ち望んだ結晶が得られると笑みが止まりません。

 

 

 

 

 

 

結晶化ロボット(モスキート)と結晶を得て嬉しそうな学生

X線回折データ収集:得られた結晶にX線を照射すると、たくさんの回折点を観測することが出来ます。その回折点の濃さを数値化し、構造解析計算に使います。つくばフォトンファクトリー(PF)や播磨SPring-8のシンクロトロン放射光を使うことで、より良いデータを得ることが出来ます。

 

 

 

 

 

つくばPFでのX線回折実験の様子

 構造解析計算:X線回折データからフーリエ変換という計算を用いて得られる立体構造は、電子密度マップという情報です。この段階では形だけの情報ですが、そのマップにタンパク質を構成する原子を当てはめることにより、化学的情報が加わります。こうして得られた立体構造から、そのタンパク質の機能が原子レベルで明らかになります。本研究室では、3Dステレオグラフィックスを使って立体構造を観察します。

 

 

 

 

 

 

 

解析コンピューターを用いて回折データ処理や構造解析計算を行っている様子

以上のように、本研究室では微生物培養、タンパク質の生化学、結晶化、シンクロトロン放射光施設での実験から、コンピューターを使った本格的な計算まで幅広い研究手法に取り組むことが出来ます!

蛋白質構造生物学研究室HP (http://takujioyama1970.wordpress.com)