資格・進路

ウマ精子の卵子活性化因子を用いてマウス不活性化精子から産子の作出に成功 2020年2月発表

生命工学科の大学院修士課程(バイオサイエンスコース)を2018年に卒業した山本悠ノ介さん、2019年に卒業し博士課程(統合応用生命科学専攻生命工学コース)2年生(2020年8月現在)の廣瀬直樹さんらのグループが、哺乳類では最も強い卵子活性化能を持つとされるウマ精子の活性化因子PLCζを使って、不活化したマウス精子を卵子と受精させ子供を作ることに成功しました。この成果は山本さんが筆頭著者として科学雑誌Journal of Reproduction and Development誌に、Production of mouse offspring from inactivated spermatozoa using horse PLCζ mRNA(ウマPLCζ mRNAを用いて不活化マウス精子からの産子作出)という表題の原著論文を発表しました。この論文は掲載号の表紙を飾っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山本さんの論文が表紙を飾っている掲載号

 未熟精子細胞を用いた不妊治療やクローン技術では、人為的に卵子を活性化させることが必要です。しかしこの技術で生まれる子供の成績は高くないため、人為的な活性化では十分な活性化刺激を与えることが出来ないのではないだろうか、という疑問が残されていました。

 そこで山本さんらは、哺乳類の中で最も強い卵子活性化能を有すると考えらえているウマ精子の卵子活性化因子PLCζのRNAを卵子へ注入する実験を行い、この疑問点の解決を試みました。最初にマウス精子に薬品処理を行い、卵子を活性化する能力を失わせました。この精子を卵子に注入しても卵子は活性化せず受精は起こりません。次にこの卵子へマウスあるいはウマのPLCζのRNAを注入し、卵子を活性化させました。その結果、ウマの非常に強い卵子活性化因子を用いても、マウスの出産率を改善することは出来なかったため、活性化因子だけが出産に影響するわけではないことを明らかにしました。