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バイオ燃料生産に期待のかかる藻類の機能解析や利用技術開発を容易にする画期的方法  2023年12月発表

2023年12月の国連気候変動枠組条約第28回締結国会議(COP28)では「化石燃料からの脱却」が合意されました。再生可能エネルギー源の開発が急がれる中、特に航空機などの液体燃料において、化石燃料を代替するものとして微細藻類が生産する油脂に由来するバイオ燃料が期待されています。なかでも、(Botryococcus braunii)という緑藻は高分子量の炭化水素を生産し、得られた炭化水素はクラッキングという工程によりガソリン、灯油、軽油に変換できることから大きな期待が寄せられていますが、その細胞は強固な殻に覆われており群体を形成することから機能解析や利用技術開発にあたって遺伝子操作を行っても遺伝的に均一な細胞集団(コロニー)を得ることが困難でした。

大学院博士課程(統合応用生命化学専攻生命農学コース)の村山拳午さんら(微生物機能・生態応用工学分野)のグループは、ボトリオコッカスを一定期間培養し、遠心分離とフィルター沪過を行うだけという非常に簡便な方法で分散状態の単一細胞を回収し、通常の単細胞微生物と同じように扱える状態にした上で、遺伝子組換えなどを行ったのちに単一細胞由来の均質なコロニーを再生させる方法を開発し、 ”A simple method for the preparation of single cells and regeneration of colonies of Botryococcus braunii NIES836”(ボトリオコッカス・ブラウニィの単一細胞調製ならびにコロニー再生のための簡便な手法) の標題でJournal of Microbiological Methods誌に発表しました。

 

Journal of Microbiological Methods誌の論文へのリンク:https://doi.org/10.1016/j.mimet.2023.106859

 

 

本方法により、従来は遺伝子導入などの操作を行っても細胞内のDNA上の異なる箇所に目的遺伝子が導入されたものが混在する状態のコロニーとなり詳細な機能解析が困難であったボトリオコッカスにおいて、改変が行われた細胞ひとつひとつから再生させたコロニーを取得することで目的通りの改変部位をもつ細胞のみを選抜し解析や応用研究を行うことが可能になります。

本論文では目的の改変部位をもつ単一細胞からコロニー再生を行い解析を行うのに十分な量の細胞量を得るにはまだ2ヶ月近くを要するため、現在、村山さんらは再生・生育を速める方法についても検討を行っています。

本成果を活用して世界中の研究者が実験の効率化が図れることから、ボトリオコッカスによる燃料生産技術の飛躍的な発展につながることが期待されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボトリオコッカス・ブラウニィの細胞群体